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EnjoySky-3 日帰り旅行を楽しみたい

南Californiaで紅葉を求めて

 かってOregon州Portland上空を出張帰りのエアラインで飛んだことがある。その窓から、山肌に燃えるように鮮烈な紅葉、黄葉(こんな言い方があるか?)をみた。 紅葉などというと日本の渓谷美の象徴、アメリカなぞにあるんですかみたいな疑問もあるだろう。筆者はかって米国駐在時代に、米国北東部、New England地方を旅したことがある。秋深まるBoston近辺、独立戦争の旧跡と丘陵地帯は紅葉で全体が輝くようであった。
 飛行機操縦を自ら行うようになって、今度はエアラインよりはずっと低く、Cessnaの高度から、より間近にアメリカの紅葉を見たいと思っていた。そこで、この季節、 インターネットをサーフしていたら米国紅葉前線地図なるものに遭遇。これによれば南カリフォルニアには、Sierra Nevada山脈の南端がこの時期の紅葉最前線。Redlandsからの飛行範囲だ。その地域ではIsabella Lakeという湖があり、飛行場(Kern Valley L05)もある。Sierra Nevada山脈とはいえ、南カリフォルニアだから山地には樹木は多くない。紅葉といっても果たして期待できるかどうかだが挑戦しようと決めた。
 Isabella LakeはCFIのCharriによればキャンプ地もあり、いったことがあるそうだ。景色もいいに違いない。

2008年11月21日(金)
 そこで今日は、初めての空港Kern Valley (L05)にソロで挑戦することにした。しかもNon Stop距離も最長157n.m.(今までの最長は訓練中のBLYTHで、Thermal経由133n.m.)。
 予約した機体はCessna152, N67361。一番慣れた機体だ。予約時刻よりかなり早めにMYAirについてPreflight Inspection開始。Weight調整用の荷物、Tow Barやらを積み込む。Weight Balanceをキチンととると、着陸時のフレアコントロールが正確にできる。Stabilizer Trimでも同じ効果がとれそうだが、やはり低速になると空力効果と 重心効果はあきらかに違うので、20数ポンドのダミー荷物を、整備場から持ち出さざるを得ない。
 今回購入したGARMIN 96C カラー液晶GPSを初めてヨークに取り付け、Back UpとしていつものGPS(GARMIN GPS Pilot III)もウインドシールド下に設置。あれやこれや飛ぶ前の準備が大変ではある。

  (GPS取付け状態、うまくセットされた・・
離陸 10:12 フライト開始
まずCajon Passを目指す。Cajon Passはカホンパスと読む。カホン峠のことだが、スペイン語の読み方。Redlandsの北へ飛ぶときはここを経由していく。高度8500ft まで上昇継続。Passまで16分、7500ft到達、8500ft、End of Climb は20.5分だった。平均上昇率338ft/min。外気温8℃、つぎのWaypoint(中間目標地点) はPalmdale VOR, 114.5MHz, 区間36n.m.を順調に飛行継続。PMD VORを過ぎて、山越え。<右上地図@地点>一番ひくい山間部を狙う。両側のピークは右が6920ft, 左が6803ft、右奥はやや高く7800ft。自機は8500ftで巡航なので、 山間部を通れば十分余裕はあるはずだが、前方が自機より高く見える。心理的なものなのかしら。理屈ではないので高度を9500ftに上げてこの山間部を通過した。 この高度では、それぞれのピークも、十分低く見えた。

@方向を望む <画像クリック→拡大>

さらに前進@方向を望む <画像クリック→拡大>
進路前方、山地の反対側に遠く雲海が見える・・・。山間部を越えて高度を8500ftに戻す。この山地西側にあたる平野は高度3000ft~4000ftあたりの雲にすっぽり覆われて地上は まったく見えない。Overcast状態。出発前に確認した気象予報ではこの雲はやがて晴れるはずだが、とはいえ若干の不安感を抱きつつ、雲海が山岳地帯と接するあたり、 上空を飛び続ける。

A付近から左前方、ただ雲海 <画像クリック→拡大>

A進行方向目的地は右前方奥 <2枚からの合成画像クリック→拡大>

 Bakersfield MOA(Military Operation Area 軍用訓練空域)の南西を沿うように飛び、ここから進路を北方、329度MH(Magnetic Heading)にとり、右手に山岳地帯(Sierra Nevada山脈)を見ながら飛行。やがて、Isabella Lakeから流れ出る峡谷の平野からの入り口に到達。入り口は、空からの地形的には、それほど明確ではなく、似たような地形が見えるが、GPS Navigation(GARMIN 96C)画面は、わずか3.8 x 5.6 cmの画面サイズながら、カラー画面でしっかりとその場所に導いてくれる。
 峡谷地帯は、BakersField MOAの真っ只中。5000ft級の山々に挟まれているが、徐々に高度を下げて両側ピークを視線より上方に見ながら、峡谷を上流にたどった。峡谷に入って10数分で、ついに目的のIsabella Lakeが視界に入ってきた。11時45分。ここまで1時間33分のフライト。高度を下げ、スピードをおとしつつ、空港にコンタクト。この空港は、管制塔無しのKern Valley Airport (L05)。Isabella Lakeの北岸にあり、通信用のCTAF/UNICOM は周波数122.8MHz。ここにコンタクト。
"Kern Valley Traffic, Cessna 67361, 3 mile south, 4000, inbound for landing, Kern Valley"
と定型の無線発信。すると、即レスポンスがあって、女性の声で
"Cessna 67361, Kern Valley is temporarily closed until 2 o'lock"
なんと2時まで空港は臨時閉鎖!。思わず再確認の無線を発信しても答えは同じ。滑走路工事中とか・・。
 思わぬことが起こるものだと、がっかりしたが、Isabella Lakeを網膜に刻んで、気を取り直し自機を右周り180度ターン。 それではと、フライトプランの、次の着陸地、Bakersfield Municipal Airportに向かうことにした。峡谷を下り、高度を上げつつ、やがて平野部にでてきた。


BIsabella Lake目指し渓谷入り口 <クリックして拡大>

BLake視認 <クリック拡大・・しても見えるか?>

Meadows Field Airport(KBFL)へのダイバート
 前方は、依然として、下方に雲海が果てしなく広がっている。南西、Bakersfield方向にはVFR着陸が可能な雲の切れ目はない。 この地域で気象情報が得られるのは、Bakersfieldの北、5n.m.ほどにあるMeadows Field Airport (KBFL), Class Delta。ここへは、 往路でも時々無線コンタクトしていた。そのときは、空港近辺もOvercast, Ceilingも低くIFR状態だった。今は良くなっていていほしい、 と思いつつ、ATIS 118.6MHzに無線を合わせる。すると、上空はOvercastからBrokenに改善, Ceiling 1500ft、視程Visibilityも6s.m.でVFR気象条件OK!。


Meadowsへの飛行軌跡 <画像クリック→拡大>
 KBFLめざし、雲海の北端から回り込もうと迂回飛行を始めた。 降下開始、空港の北東6n.m.あたりからKBFL towerにコンタクト。Runway30Rを指示される。Right Baseからの進入をめざし、 GPSの指し示すKBFLの南方向に、降下しつつアプローチ。しかしなかなか空港が見えてこない。下方視界はいいのだが、Ceilingが低いだけあって、 2000ft(と推定)あたりは進行方向が視程不十分。だいぶATIS情報とは異なる。ATISは空港周辺地上気象だから、ということだろうが。おまけに、 この高度は気流がひどく悪い。
 VSIはばたばた上下に振れ、自機は今まで経験したことのない激しさで上下動!。気がつくとヨークを握る手に思わず力が・・・。 そのうち、右前方1時半あたりに滑走路らしきものが視界に入ってきた。徐々にそれはMeadowsの空港であることがはっきりするとともに、 自機は、気流の悪い空域を脱してきた。

今度はGPS画面にAlert!(警戒!)、地上高度障害物が2箇所ほど点滅している!。高度下げすぎか!。進路修正。Traffic Pattern に近接、緊張感も若干やわらいで、BaseからFinalへと機を進める。滑走路は長さ10857ft、幅150ftと巨大で、着陸誘導灯PAPIも利用しつつ、終わりは楽にタッチダウン。

 滑走路南端までtaxiしてEpic Jet CenterなるFBOにてfuel serviceを依頼。12:20エンジンストップ。離陸から2時間8分のLongest Flightとなった。燃料給油の間に空港敷地外で至近のメキシカンレストランまで歩く。席について、ようやく一息つげた。あとは同じルートを帰るだけ。落ち着いて行こう。

帰路
 13:45 Takeoff。Runway 30 、北西方向から右180度ターン。再度の山越え、すじ雲などが美しい空路を、同一ルートでRedlands(KREI)帰着、15:34、エンジン停止。帰路は1時間49分のTime En Route。

帰路の美しいすじ雲 <画像クリック→拡大>

フライトを終えて・・
 Meadows(KBFL)に初めてのDivert。アプローチは視界悪く
おまけに気流も乱れ、VSIが大きく変動。初めての体験で
"はらはらどきどき"の体験だったが、なんとかたどり着いた。離陸から2時間8分の最長飛行時間。いままでで最大のアドベンチャーになった。雲上飛行、タービュレンス、タワー空港(CLASS-D)へのダイバート。GPSのおかげで出来たダイバートだった・・・。
 
 え?紅葉は? 見られなかった、そうなんです・・・

<右写真・・・GPSの見え方ですが、実物より大きく写っていますが実画面寸法でも十分有効。アンテナ内蔵、電池式でワイヤ取り回しもなくすっきり。 クリックで写真拡大>